なんすこのこと

2023年も暮れようとしております。
ひさびさの投稿です。

今年は,大きな区切りの年でした。2003年に,当時の勤務校だった南山大学の同僚の先生と有志の学生たちで始めた「南山大学スコラ・カントールム」(略称:なんすこ)が20周年を迎えたのを機に,指揮者としての役割から引退させていただくことにしたためです。12月10日に20周年記念ともなった「Advent Prayer」がカトリック南山教会であり,OBOGの有志の方々も集まってくださり,一緒に音楽をもってお祈りするひとときを持つことができました。昨日(2023年12月27日)は,名古屋で「12月総会」という,一年の総括をするなんすこの会議があり,そこで現役生の皆さんにお別れの挨拶をしてまいりました。これからは,ひとりのOBとして,現役の皆さんの活動を見守り,応援してゆきたいと思っています。

20年の思い出は僕のなかにも,当時から変わらずこの活動を支えて続けてくださったオルガニストのぴょんきち先生や初期メンバーのなかにもあります。また,20年には満たないものの,活動をともにしてくださったOBOGの先輩方をはじめ,今年なんすこに入団してくださった1年生の現役生の皆さんに至るまで,それぞれに思い出があり,また,これからも(僕は共有できないけれど),なんすこの思い出はきっと増えてゆくことでしょう。

僕はこれまでのなんすこの活動のなかでさまざまな失敗を経験しました。誠にお恥ずかしい限りです。失敗から学ばせていただいたこともありますが,相変わらず同じ失敗を繰り返していることに気づいて滅入ってしまうこともあります。けれども,僕が南山を離職した2018年に,なんすこ出身の若いお二人になんすこの指導をお任せできたこと,そして来年から,このお二人の後任として,南山のキリスト教学科のお二人の現役の先生方(実はこのお二人もなんすこのご出身!)をお迎えできること,この2点だけは,神さまがなんすこに用意してくださった大きなお恵みだったとはっきりいうことができます。

振り返れば,なんすこは,学生が「混声の聖歌隊をつくりましょう」と声を上げたことから始まり,学生とともに育った聖歌隊だったとつくづく思います。当初,聖歌隊という名前はついていませんでした。南山はミッション校でありながら,ミッション校らしさを前面に出すことに慎重な風潮が大学内にありました。今では当たり前のように開催されている12月の降誕祭(クリスマスの集い)も,そもそも学生が大学に要望を出したために,学生課がこれに応じるかたちで始まったという経緯があるほどです(これについては『大学時報』365号に書いたことがあります)。当然,聖歌隊などというものはなく,学生が声を上げたときも,聖歌隊という名をつけることに躊躇がありました。ただ,「スコラ・カントールム」という,7世紀にその存在が確認されているローマの聖歌隊の名前をつけることで,団の方向性を示そうとはしていました。

ある年の春の新入生歓迎活動の時期,立て看板をつくっていたときに,ひとりの学生が「じゅん先生,『南山大学スコラ・カントールム』では何をする団体かわからないから,前に『聖歌隊』という名前をつけましょう」と言ってくださいました。以来,定期演奏会のチラシにも「聖歌隊 南山大学スコラ・カントールム」と掲載されるようになりました。正式に名称変更し規約にも載せたのは2017年,創立15周年を迎えた年です。その同じ2017年にローブの着用が導入されましたが,これも学生の提案によるものでした。ローブ導入によって,聖歌隊としての団の特徴を目にみえるかたちで表すことが可能になり,団員が40名を越すまでに成長したのもこの年でした。(まさかこの赤いローブが僕の「ちゃんちゃんこ」になって,最後の年に着ることができたとは。これも神さまの粋なはからい,僕にとっては大きなお恵みです。)

2018年3月に南山を離職し,同じ年の4月に聖グレゴリオの家の講師になった後も,なんすことの関わりは続き,月1回になってしまいましたが,練習に参加,(断続的にではありましたが)それは僕が西南学院大学に職をいただいた2021年以降も続きました。この間,世界をコロナ禍が覆い,なんすこも活動の極端な制限と団員激減の波をかぶることになります。

そんななか,歯を食いしばって逆境に耐えてくださった方々が,現在の2年生,3年生,4年生であり,また,僕の後任として指揮者を引き受けてくださったお二人でした。このお二人がいらっしゃらなければ,なんすこは到底持ち堪えることはできなかった。どれだけ感謝してもしきれないほどの恩を,僕はこのお二人に感じています。

今年,定期演奏会に代わるお祈りの集いとして開催された「Advent Prayer」も,「日々,病と闘っておられる世界中の医療従事者の皆さま,罹患された方々とそのご家族のため,さらには生活に不安をおぼえ孤独をかかえておられるすべての方々のために,皆さまと心を合わせてお祈りを捧げるために」(歌詞パンフレットの顧問挨拶より)と,2020年に始まった,聖歌隊ならではの集いです。

このように,なんすこは,その時々の学生の声によって育てられた「聖歌隊」です。その創立と企画運営に長く関わることのできたしあわせと感謝に,あらためて心ふるえる思いです。

コロナ禍を脱した今年,7名もの新入生を迎え,なんすこは新たなステージに入りました。来年度は,いっそう多くの新入生団員をお迎えできることでしょう。そんな「なんすこ」を見守り,これからも何らかのかたちでサポートしてゆきたいと思っています。

西南学院大学聖歌隊チャペルクワイアとの交流会もそのひとつ。今年はなんすこの皆さんが1泊で福岡を訪ねてくださり,チャペルクワイアとの合同練習会,夕食会,太宰府へのプチ遠足などを楽しんでくださいました。そのおかげでしょうか,なんと,今年のなんすこの「Advent Prayer」には,わざわざ福岡から演奏を聴きに来てくださったチャペルクワイアの団員のお姿もありました。これも今年とびきりうれしかったことのひとつ。来年は,福岡組が名古屋を訪問する予定です。聖歌隊同士の交流を通して,聖歌隊の音楽と演奏についての理解がいっそう進むことを願っています。

Ut mens nostra concordet voci nostrae. わたしたちの心がわたしたちの声と調和しますように!(「聖ベネディクトの戒律」19章より)。