今日からアドヴェントが始まります,と牧師先生が仰って,ひとりのお子さんが祭壇前のクランツのろうそくに一本めの明かりを灯し,今年の待降節の礼拝が始まりました。
説教では牧師先生が茨木のり子の著書『詩のこころを読む』から「レモン1個が50円で買えるなんて信じられない。レモンの形,色,ビタミンCの含有度,あの1顆は私のなかで5千円くらい,高村光太郎や梶井基次郎が作品の中でレモンに与えた価値は宝石並み」という言葉をご紹介くださいました。
学生時代に下宿生活を始めた頃,茨木さんと似た驚きをスーパーで買ったピーマンを見ながら抱いたことがあります。そのときの感動を詩のなかにとっておいたことを思い出し,ちょっとうれしかった。
松坂屋ストアーにて
松坂屋ストアーにて
2袋98円也のピーマンを買った
袋を下げて帰る道すがら
ふと考える
あの98円は
誰に支払われるべきであったかと
生産農家
トラック輸送
卸し
小売スーパー
98円はこれらで働く人々への
わずかばかりの謝礼ではあった
しかし・・・
私はいきおい帰宅を急いだ
みずみずしく緑の光るこのピーマンの
一つ一つを良く味わい
せめてそうすることにより
未払いの代金を払おうと…
茨木さんといえば,最近聞き始めた朝日新聞のポッドキャスト「ニュースの現場から」のエピソードで,日韓の架け橋となった詩人として尹東柱とともに紹介されたばかり。
ここのところ「王の願い:ハングルの始まり」(チョ・チョルヒョン監督)「空と風と星の詩人:尹東柱の生涯」(イ・ジュニク監督)を立て続けに観たせいか,「お隣の国のことば」に興味がある。尹東柱の詩を韓国語で読んでみたい。Jung Seung Hwan の歌のテキストを韓国語の味わいで読んでみたい。コロナが終わったら『明洞のキリスト』(教文館)を持って真っ先に韓国に行ってみたい。
茨木さんとともに『櫂』を創刊した川崎洋さんは,『あたまわるいけど学校がすき:こどもの詩』の編者。今の勤務先にもゆかりのある人。
こんなことを1日中考えていたら,なんだか心にも,明かりが灯ったような気がしました。