空に根っこ

雄大な富士山を間近に望む静岡県富士宮市…。
今朝の「NHK 小さな旅」(2021年4月11日放送)の冒頭ナレーションです。

この町の標高700メールにある猪之頭集落に「パラグライダー」の離陸場があり,富士山に向かって鳥のように飛び出してゆくことのできる絶好のロケーションということで,全国のパラグライダーを集めているそうです。

今回の「小さな旅」の冒頭では,この猪之頭でパラグライダーのインストラクターを務める平木啓子さん(57歳)が取り上げられました。内外のレースで8度の優勝経験を持つプロ選手。猪之頭に来て10年余り,離陸は1万回を越えるという大ベテランです。

平木さんは北海道に生まれ育ち,子供の頃から空が大好き。自由に空を飛び回るピーターパンに憧れていたそうです。30歳で結婚,夫に誘われて夢だったパラグライダーを始めたとのこと。ところがその後,離婚や,不況による会社のリストラに遭うなどの辛い経験をし,彼女の人生に転機が訪れます。落ち込んでいた時に初めて訪れた猪之頭。富士山に抱かれながら空を飛ぶことができるこの地に魅せられ,移住を決意します。

「飛んだら辛いのは忘れましたね。目の前の上昇気流を見つけるとか,そんなことだけに集中して,何も考えなくていいってゆうか,空は楽しいって,自分のいる場所だっていう感じがしました。」

以来,普段はパラグライダーのインスラクターをしたり,地元の農家から野菜を分けてもらったりして生計をやりくりしながらプロ選手としての生活を続けておられます。と同時に,地元の人々にも猪之頭の空の素晴らしさを伝えたいと,地元の子供たちにパラグライダーを教える活動にも取り組んでいるそうです。そんな彼女のインタビューがとても印象的でした。

「空からもらったのは心が裕福になれるような人生。その幸せを他の人にもお裾分けしたい。それが空に対する恩返しにもなるのかなぁなんて思っているんです。今,私の根っこはここにあるんで。ここが好きです。」

空からいただいたものを空にお返しする…。
空(そら)に根っこを見つけた平木さんの,なんともポジティブで謙遜味あふれることば。
毎週チャペルに通う気持ちにもどこか似ている気がします。

そんな平木さんの「平木啓子の奮戦記」はこちら