始業の祈り 終業の祈り

南山大学スコラ・カントールム 2011年度定期演奏会パンフレットより

「王国」とまでいわれる福島県をはじめ,東北地方は合唱の盛んな土地である。合唱を楽しむ同じ仲間として東北の方々に何をして差し上げられるのか。3月の大震災の直後,わたしたちは話し合いのひとときをもった。

わたしたちの出した結論は,大学の募金に協力させていただくことと,聖歌隊として,毎回の練習の前に,亡くなった方々のご冥福と被災者の方々の一日も早い心身の快復と生活再建のために黙祷と「始業の祈り」をささげること,であった。3年前から続けている「終業の祈り」と併せ,祈りのうちに練習を始め,祈りをもって練習を了えることを通して,合唱の楽しいひとときにあっても被災された方々のご苦労を忘れないでいたい,との思いからだ。それぞれラテン語で歌われる,次のような祈りである。

(始業の祈り)主よ,わたしの唇を開いてください。わたしの口はあなたへの賛美を告げます。主よ,わたしを助けに急いでください。栄光は父と子と聖霊に,はじめのように今もいつも世々に。アーメン。

(終業の祈り)神の護りがいつもわたしたちとともにありますように。またここに欠けるきょうだいたちにも。アーメン。

実はこれらは修道院で千年以上にわたり歌い継がれる聖務日課からの祈りである。始業の祈りは,朝早く聖堂に集まった修道士(女)たちが日々の必要な助けを神に願う「開口一番」の祈りであり,終業の祈りは,一日の務めを了え床に就く前に,病床や旅路にあって聖務を欠席せざるを得なかった兄弟(姉妹)たちのことを思って歌われる。

今も世界中の修道者がTOHOKUとFUKUSHIMAのために祈っていてくださる。わたしたちもまた,被災された方々の心に寄り添い「唇を開いてください」「助けに急いでください」と歌いたい。「ここに欠ける兄弟姉妹」が被災者の方々にもおられることを,わたしたちは憶えていたい。これが2011年のわたしたちの決意である。